2015.10.18
皆様ご無沙汰しております。工場のハムでございます。
今日は、「他所では読めないフェラーリエンジンの話」とでも題しまして、現在作業中の512BBiについて書いてみます。
夏前から降ろして作業していたエンジンですが、タイミングベルトのテンショナーが折れていたため、その部品の手配に時間が掛かり
(生産終了だったので部品自体を製作)、やっと本日ボディーに搭載できるまで組みあがりました。
写真は搭載前に記念撮影したものです。
当時のミッドシップモデルは、V8も12気筒もミッションの上にエンジンを重ねた2階建て構造という、他に例を見ない特異なレイアウトをしています。
その目的は、ミッションも含めたパワートレイン全長を極力短くするため。
リア車軸付近に重量物が集中し、重心も高くなるデメリットは二の次で、パワーユニットを短く凝縮した分、キャビンから前のスペースを広く確保するという、デザインとラゲッジスペースを優先させたパッケージになっています。
コーナリング性能の素性を高めるよりも、顧客が求めるスタイリングや実用性を重視したという、何ともかつてのフェラーリらしいレイアウトで、当時ライバルだったカウンタックは、少しでも重量物を車両中心に寄せるため、ミッションを室内にめり込ませてまでレイアウトしていたのとは対極の構成です。
この方式は365BBから始まり、新しいモデルになる度に改良を受けながら、最後の512Mまで30年以上続きました。
512BBiは、BBシリーズ最後の車種。
エンジン本体は前モデルをベースに、半球形燃焼室と2バルブの基本構造はそのまま、機械式のK-ジェトロでインジェクション化されたのが最大の特徴です。
他にも、カムの作動角がキャブよりも30度前後少ない等の変更を受け、高回転で荒々しく回る365のエンジンとは、かなり趣が異なり、モーターのような回り方をします。
レッドゾーンは365の7800rpmから1000rpm低くなりました。
オルタネーターは増設され、エンジン下の左右に2つ装着されています。これは、インジェクションで増加した消費電力を賄うためで、現在ほど高出力のオルタネーターが無かった時代ならではの、苦労の跡を見ることができます。
元々は、部品点数が少ないキャブ前提で作られていた車なので、隙間を見つけてはインジェクションの部品を詰め込んでいるため、外見はBB同士似ていてもキャブのモデルと整備性は全く異なり、分解組み立ての際は苦労します。
また、K-ジェトロはキャブ程ではなくてもエンジンを完調に保つ調整作業が定期的に必要で、特にBBiは、調整を怠るとすぐにエンジンストールを起こします。
結果、公称パワーが下がったことや、実はBBシリーズで一番生産台数が多いこと等が、365や512のキャブに人気が片寄る理由なんでしょうが、インジェクションならではのメリットもあります。
それは気難しくないこと。
キーを捻れば簡単にエンジン始動するのは現在では当たり前ですが、当時のキャブのスーパーカーは、そう簡単にはいきませんでした。
特に寒い時は、エンジン始動前にアクセルペダルを操作し、キャブの加速ポンプからシリンダー内にガスを送り込んだ後にセルを回し、初爆を感じながら少しづつアクセルを開けてエンジンを始動させる手順が必須です。
始動した後も、アイドリングが安定するまではアクセルを操作し、回転を上げたまま保持しないとエンジンが停まります。
プラグはエンジンが始動しなくなるまでカブることもあり、その時は外して掃除しなければなりません。これら最低限の作業を自分で行えないと、走らすこともままならない代物であり、キャブ特有の痛快さを味わうためには、それなりの引き替えがあるということです。
BBiは完調ならば上記のような苦労が無く、キーを捻るだけでエンジンは始動しますし、まず自分でプラグを外す機会は無いでしょう。
それでいて最高速は280km/hに達し、クーラーも寒い位効く。
当時は、スーパーカー特有の煩わしさから解放された、夢のような車だったと思います。
各BBのパワー差は数十馬力で、全パワーに対して1割程の違いになり、当時は大きな差だったでしょうが、現在の12気筒は各メーカーが700馬力台で戦う時代。何と当時の倍に迫るパワーな訳です。
それと比較すると、速さの違いは今となっては団栗の背比べで、フェラーリ同士では大体360モデナと同じか、ちょっと遅いかな?位の差。
これらを考えると、相場価格や希少性に由来した価値は別として、BBの形が好きだけど、365程ガチで車と付き合うのはちょっと。と考える方にはピッタリで、もう少し評価されても良いのでは。と思います。
あのようなデザインの車は、今後出ることはないでしょうし。
最後まで読んで頂き有難うございました。
また登場しますので、お付き合いの程宜しくお願いいたします。
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