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F129エンジンのバルブタイミング調整

2019.01.16

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皆様こんにちは。工場のハムでございます。

こないだまで組み立てを行っていたF129エンジンを題材にして、今日はバルブタイミングの調整方法を詳しく解説してみたいと思います。

フェラーリのエンジンは、バルブタイミングを細かく調整できるのが特徴で、サービスマニュアルにはクランク角で基準値の±1度の範囲に調整するようにと記載されています。

これは、普通の車でタイミングベルトやチェーンの取り付け位置という意味で使うバルブタイミング(歯車の数/360)の、10倍以上の測定精度を求められることなんですが、フェラーリ触るならこの位やってよみたいな感じで、しれっと指示しているのがフェラーリらしいというか。(でも新車組み立て時に出来ているとは限らなくて、これもまたフェラーリらしい)

また、ここまで手をかけないと本来のパフォーマンスを発揮できないけど、パフォーマンスを発揮した時は物凄いぞ。という、ちょっと表現が難しいのですが人に例えると、繊細で脆い天才みたいな。かつてのフェラーリエンジンは、そんな印象が強いです。

バルブタイミングの調整は、タイミングベルト交換程度の通常メンテナンスで毎回やる訳でもないのですが、今回はエンジンフロントカバーに内蔵されているタイミングギアの脱着、ベアリング交換を行ったので、測定調整は必須です。

まず測定前の手順として、F129はタペットクリアランスの調整にシムを用いるので、バルブタイミング測定時の規定値である0.5mmになるよう、シムを入れ替えてクリアランスを調整します。

 

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それは、サービスマニュアルに記載されるカムの作動角は、タペットクリアランスが0.5mmの時にカムがバルブを押している間のことだから。これもフェラーリ独特の基準ですね。後の油圧タペットを採用したモデルでは測定方法も変わり、それはそれでかなり独特なのですが、その紹介は後の機会にでも。

 

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次はダイアルゲージを使って1番シリンダーのトップを出し、クランクに分度器を取り付けます。F129以降はフライホイール等にシリンダートップの打刻が無いので、自力で測定するしかないのです。といっても、これ以前のモデルではフライホイールにトップ位置の打刻があっても、実際に測定すると何度かズレているのは当たり前というレベル(笑)なので、どのみち自分で測定することになるのですが。

 

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これだけの準備を行ってやっと測定ができます。測定自体は慣れると意外と簡単で、カムとバルブの間にあるバルブリフター(カムが押していない時は手でくるくる回せる)が、手で回せない時はカムがバルブを押しているという解釈で大丈夫。タペットシムは0.05mmごとにグレード分けされているため、タペットクリアランスが0.5mmピッタリには中々ならず、若干広くなることが原因で、測定した作動角は基準値より少な目になる傾向。それを計算で補正し、測定値から実際の値を求めます。

調整は、カムプーリーに挿してあるピンの取り付け位置を変更することで行います。上の写真で、カムプーリーのセンターボルトを囲むように1周開いている穴です。カム側にも同様に穴が開けてあり、隣の穴までの間隔がカム側とプーリ側で1.5度違うので、ピン位置を1つ横に移動するとクランク角基準で3度タイミングが変わるという仕組み。3度の倍数で調整できれば±1度に必ず収まるという理屈です。これもシンプルな構造でフェラーリらしいところ。

タペットクリアランス0.5mm(=0.5mmリフト)でのカムの作動角はIN、EX共に244度。この値はフェラーリがインジェクション化された、512BBiや308GTB(GTS)i辺り、あとスペチアーレの288GTOやF40もそうだったかな。から伝統的に使わていた値なんですが、モデルにより作動タイミングはアレンジされているのが面白いところ。おおむね旧いモデルの方がオーバーラップを大きく取ってます。

カムの作動タイミングは、F129では若干バリエーションありますが、私が合わせる場合、INがBTDC16°~ABDC48°、EXがBBDC54°~ATDC10° 辺りが多いですかね。

サービスマニュアルではEX側のオーバーラップが、もう2度ほど大きかったと思いますが、オーバーラップを大きく取るほど高回転でガオーと気持ちよく回る反面、低速では空ぶかしでエンストするなどストールしやすくなるのと、特にF129の場合は、基準値でも真夏のアイドリングは厳しい等の経験を踏まえて、折角のフェラーリエンジンだからと高回転に振りたくなる気持ちを抑え(笑)今回は上記の値で調整しました。

ちなみにタイミングをアレンジする場合、IN側よりEX側の方が作動タイミングの変更に敏感(=エンジンのキャラクターが変化しやすい)な気がする。2度位の変更でも結構変わります。

調整はなかなか一発では決まらないので、何回か測定、調整を繰り返して基準値に合わせられたら、タペットクリアランスを通常に戻し、ヘッドカバーなどを組み付けていきます。地味な測定作業を長時間行うので、これが終わると山を越えたなーという気がする。

現在はエンジンを車体に載せる直前の状態。

 

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どんな感じで回ってくれるのか楽しみ。またレポートします。

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