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206GTをバラそう。 その7:アルミやマグ鋳物の考察

2019.06.26

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皆様こんにちは。工場のハムでございます。

本日は久々に、Dino206GTネタで、それもマニアックな感じで、エンジンやミッションに使われているアルミやマグ鋳物の考察をしてみたいと思います。

後のフェラーリと違って206や246GTは、鋳物パーツをFIATと分業して製造しており、エンジンブロック、シリンダーヘッド、ヘッドカバー、エンジンフロントカバー、あとはカムエンドカバーやオイル注入口の小物までがFIATの製造担当だったようで、それらのパーツには、もれなくFIATの刻印が施されています。

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(例:カムエンドカバー裏にある、エンジン形式、部品番号とFIATの刻印)

それでちょっと驚くのが、ヘッドカバーなどマグネシウム部品の製造担当がFIATなこと。F1を製造するレース屋の意地?で、マグはうち(フェラーリ)に任せろみたいな想像をするんですけど、実際は違うんです。上の写真の部品も材質はマグなのですが、特に表面処理されていないのにもかかわらず、50年経ってもそんなに腐食は無い状態だったので、マグ材料による軽量化だけでなく、耐久性も考慮した合金になっているんだろうなと。

フェラーリが製造担当するエンジンやミッション関係での鋳物部品は、エンジンリアカバー、ミッションケースと周辺のカバー類、クラッチハウジングやデフケースなどで、何でそう断定できるかというと、造形と表面処理が明らかに違うからなんですね。

FIAT製の鋳物は造形が端正で、入念に型を成形した感じなのに対して、フェラーリ製は型を粘土で簡単に作りました。という、良く言えば手仕事の野趣に溢れたワンオフっぽさ(笑

で、普通に表現すると結構いびつな造形です。

表面処理については、FIAT製は特に行われていないのに対して、フェラーリ製はというと、ケース内側のオイルに触れる部分にはプライマー塗装を施してあり、そのプライマーが外にも飛び出して塗装してしまうので、それを覆うために外側はシルバーで塗装されています。

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分解前のミッションケース。オリジナル塗装の上から、更に缶スプレーのような塗装されていたので、再塗装をするため表面のシルバーを剥離したところ、

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下地の緑色をしたプライマーが出てきました。見た所エポキシっぽい材質かな?

ミッションケース内側はまんべんなくプライマー塗装されているのに対し、外側はマスキングせずに塗ったからちょっと外にはみ出ちゃった。みたいな、開口部だけに集中して全体は塗装されてません。何か理由があってわざわざ塗装しているのでしょうが、現在その理由を究明するまでには至らずです。

ちなみにこの下地塗装は、エンジンのシリンダーブロックは2バルブ時代最後の512BBまで、ミッションケースは512Mまでかな。までのモデルで施してあり、かつてのフェラーリ独自の、伝統的な鋳物部品の塗装工程となっています。だから、BB系のエンジンで年数が経って表面の塗装が痩せてくると、下のプライマーが透けてきて緑がかった灰色に変色してくるのですね。

こうして2社が製造した部品を見比べるほど、FIAT社の技術は優秀だったんだなあ。と思うようになりまして。それは即ち、鋳物1つ製造するにも、高精度な型の製作や金属の成分配合ノウハウなど、とにかくマンパワーや設備投資が必要な部分は、流石に大企業の方が有利だったんだなあ。と、そんな感想を抱いた訳でした。

少数生産の宿命で非効率と分かっていても、鋳型を1つ1つ粘土で造り、あとは情熱でカバーするぜ。という、当時のフェラーリっぽさも大好きなんですけどね。

現在まだエンジンの主要部品は外注先に出払っているので、それらが良くわかるような部品ギャラリーみたいな回を、後に改めて紹介してみたいと思います。

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